超小型PC ST160Eの静音化
久々のブログ更新となってしまいました。
EPSON製の超小型PC、Endeavor ST160Eのケースファンを交換して静音化しましたので、ブログに書き記します。
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【結果】
最初に結果を記します。
①下記の静音効果を得ました。
無負荷時:-5dB、高負荷時:-9dB
②下記の代償がありました。
CPU温度上昇:+5K程度
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【経緯】
ST160Eは2012年頃に製造販売された古いPCですが、用途によっては2020年現在でも充分な性能を有しています。
私はこれをサブ機兼予備機として運用していましたが、動作音が大きく耳障りであるという問題がありました。
特に負荷をかけてファンの回転数が上がったときには映画や音楽の鑑賞に影響する程でした。
そんな中、ST160Eに加工を施すことなくケースファンを交換するだけという手軽な方法で、静音効果を得ることができるということを知ったので、これを試行することにしました。
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【作業準備】
ST160EはケースファンがCPUファンを兼ねます。
1つのケースファンで、CPUのヒートシンクを覆う導風板から空気を吸い、ケース外に吐き出す構造になっています。
従って、ケースファンの交換作業にはCPUへの物理的アクセスが伴います。
なので、ケースファンの交換作業を開始する前に、交換するケースファンだけでなくCPUグリスも準備しておきます。
ただ、今回の作業ではCPUのヒートシンクを外したのでCPUグリスの塗り直しを行いましたが、ヒートシンクを外さなくてもケースファンを交換できる可能性はありそうでした。
私は作業前にCPUグリスを準備しましたが、実はグリスは不要かもしれません。
【準備物】
①ケースファン
Xinruilian社製、X-FAN RDM6020S
ファンの寸法:60x60x20mm、端子:3pinなら適合すると思います。
②CPUグリス
Thermal Grizzly社製、Hydronaut 1g
Amazonで販売中の中から最少量かつ耐久性重視の製品を選択しました。
③工具等
プラスドライバー:No.2 (ST160Eのケースを開けるため)
プラスドライバー:No.1 (ST160E内部の金具を外すため)
ウエス&洗浄剤 (古いCPUグリスを拭き取るため)
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【作業内容】
ST160Eのケースファンを交換する作業は別の記事とし、この記事では割愛します。
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【静音効果】
音量及び音紋の測定にはiPhoneのアプリを使用しました。
絶対的な測定精度には信頼性が低いかもしれませんが、相対的な変動量は参考になろうかと思います。
本記事ではケースファン交換前後の変化を評価するために、iPhoneのアプリによる測定結果の変動量を信頼することとします。
ケースファン交換前後の音量及び音紋測定結果は次のとおりです。
①無負荷時
交換前はケースファンの回転が低速の状態でも鳴り響いていた排気音が、交換後は無くなり僅かにファンの駆動音が聞こえるのみとなりました。
交換前後の比較を感覚的に表すなら、無音化改造を施したかのような圧倒的な静音効果です。
ただし、交換前を知らずに交換後のみを観察したなら、普通の静かなPCという程度の感想で特別な感動はないでしょう。
うるさいPCが静かなPCになりました。
②高負荷時
ゴーと鳴り響く排気音は、確かに小さくなったものの、交換前後の変化は大きくはないように感じます。
しかしケースファン自体の駆動音は明らかに小さくなりました。
その結果、測定値が示す静音効果以上に、実際に聞く音の耳障り具合が低減された音質になったように感じて、ST160Eの音が気になりにくくなったように思います。
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【ケースファンの新旧比較】
ST160Eを静かにすることだけを考えてケースファンを交換したのですが、交換前後のST160Eを観察し比べると、風量の変動が小さくないということに気付きました。
取り外したケースファンには「AFB0612VHD」という型番が記されています。交換したX-FAN RDM6020Sと仕様を比較しました。
ファン自体が出す騒音が64%に低減される代償として、空気の流量も同等の減量があるということが分かりました。
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【CPU温度測定】
ST160EのケースファンはCPUファンを兼ねます。これの空気流量が下がるということは、CPUの冷却性能に直接的な影響があるということが考えられます。
そこでCPUの温度測定を行いました。
動画のエンコードを行い高負荷状態を作ります。
無負荷から高負荷、高負荷から無負荷に遷移するときのCPUの温度変化は次のとおりです。
交換前は無負荷時40℃前後、高負荷時65~70℃のCPU温度が、交換後は無負荷時40~45℃、高負荷時70~75℃程度で推移していることが分かります。
負荷をかけ始めたときのCPU温度上昇も急になったように見えます。
このグラフから、ケースファン交換の影響は次のとおりと判断します。
「CPU冷却能力は低下し、CPU温度は+5K程度になった」
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【CPU温度上昇の影響】
ケースファンを交換することでCPU冷却能力が低下し、CPU温度が上昇しました。
これによる影響を評価します。
高負荷時のCPU温度と共に、CPUの動作周波数と消費電力を測定しました。
約1時間程度高負荷状態を維持しても、グラフの状況は変化しませんでした。
ケースファン交換によるCPU温度の上昇はサーマルスロットリングを発生させる程のものではなく、「実用上の影響はない」と評価します。
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【まとめ】
安価かつ手軽ながらも堅実な方法で大きな静音効果を得ることができました。
私の環境では、ST160Eはデスクから2m程度離れた位置に設置しているので動作音はほとんど聞こえません。
今回の静音化は大変満足できるものでした。
ST160Eを利用している全ての方にお勧めします。